ABA(応用行動分析学用語集)
ABA(応用行動分析学)で出てくる言葉を、こちらで用語集として解説していきます。
随時更新で増えていく予定です。
用語 | 解説 |
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強化の原理 | 行動した後に何か良い刺激が出現したり(好子出現による強化)、悪い刺激がなくなったりすることで(嫌子消失による強化)、その行動が増えること。ABAにおいて最も重要な原理。自発的行動の増加に用いられる。 |
弱化の原理 | 行動した後に何か悪い刺激が出現したり(嫌子出現による弱化)、良い刺激がなくなったりすることで(好子消失による弱化)、その行動が減ること。 |
好子消失による弱化 (負の弱化/負の罰ともいう) | 行動した後に何か良い刺激がなくなることで、その行動が減ること。*例、お昼休みに同僚から「仕事手伝って」といわれる⇒仕事を手伝う⇒お昼休みの時間がなくなった、その後同僚の仕事を手伝うことが減った。 |
好子出現による強化 (正の強化ともいう) | 行動した後に何か良い刺激が出現することで、その行動が増えること。*例、営業のノルマを与えられる⇒1日に100回営業電話をかける⇒上司から「1日にそんなに電話かけるとは、がんばっているな。期待しているよ」といわれる、その後営業電話をかけることが増えた。 |
好子(強化子ともいう) | 行動の後に与えられることでその行動を増やすような刺激。また、行動した後になくなることでその行動を減らすような刺激。 |
嫌子消失による強化(負の強化ともいう) | 行動した後に何か悪い刺激がなくなることで、その行動が増えること。*例、上司に説教されている時に⇒「すいませんでした」と謝る⇒上司の説教がおさまる、その後説教される時は謝ることが増えた。 |
嫌子出現による弱化(正の弱化/正の罰ともいう) | 行動した後に何か悪い刺激が出現することで、その行動が減ること。*例、上司から「報告書出して」と指示があった⇒上司に報告書を出す⇒「じゃあ次はこれやって」と新しい仕事を渡される、その後、報告書を出す行動が減った。 |
嫌子(弱化子/罰子ともいう) | 行動の後に与えられることでその行動を減らす刺激。また、行動の後になくなることでその行動を増やす刺激。 |
プロンプト | 行動をうながす補助刺激のこと。簡単にいうと、行動のヒントのこと。*例、駅のホームの案内板などがこれにあたる。 |
フェイディング | プロンプトありで強化されていた行動を、徐々にプロンプトをなくしていくこと。*例、はじめは駅の案内板(プロンプト)を見ないと正しいホームにたどり着けなかったが、徐々に案内板を見なくてもたどり着けるようになった、など |
ABC分析 | 行動を分析する手法の一つで、行動する前の先行条件(Antecedent)⇒行動(Behavior)⇒行動した後の結果(Consequence)、の3つで考える。 |
ABA | 応用行動分析学(Applied Behavior Analysis)の略称。環境と行動についての知見を人間や動物に応用し、行動改善を考える学問 |
シェイピング | 目的とする行動をいくつかの段階に分けて徐々に強化していくこと。*例、新入社員がいきなり完璧な書類を作成するのは難しいので、はじめは書類の提出を条件に褒める⇒次に正しいレイアウトや形式で書くことを条件に褒める⇒最後に正しい形式と内容が両立していることを条件に褒める、など。 |
確立操作 | 強化子の効果量を変える操作のこと。*例、お腹いっぱいの状態で食べるカレーと1日何も食べていない状態で食べるカレーでは、カレーという刺激は同じでも、強化量が異なる。 この例では1日何も食べないというのが確立操作にあたる。 |
課題分析 | 複雑な行動をいくつかの細かい具体的な行動に分けること。 *例、営業の電話をかける、これを課題分析すると、①顧客リストを用意し、電話番号を確認する②受話器を取り、電話番号を押す③相手が出たら、あいさつと自己紹介の言葉を言う④電話の用件を伝える⑤紹介する商品について説明を行う⑥購入、非購入にかかわらず謝辞の言葉を言う |
スキナー: (バラス・フレデリック・スキナー) | ABA(応用行動分析学)の創始者。 Burrhus Frederic Skinner, 1904年3月20日 – 1990年8月18日。 |
シングルケースデザイン(単一被験者実験法ともいう) | ABAの中心的な研究方法。他の心理学の多くは複数人がいる集団をいくつか用意して平均値などによって効果を比較するが、シングルケースでは一人被験者に対して条件の導入と除去を複数回繰り返す。 |
強化スケジュール | いつ、どんな条件で強化するのかについてのスケジュール。多数存在する。 行動するたびに毎回強化子が与えられる連続強化スケジュールと特定の条件を満たした時だけ強化子が与えられる間欠強化スケジュールに分けられる。 |
連続強化スケジュール | 行動するたびに毎回強化子が与えられる強化スケジュール。自発回数が少ない行動に対して、行動を獲得させるのに有効なスケジュール。ただし、強化スケジュールの中でも行動が消去されやすい。 |
間欠強化スケジュール(部分強化スケジュールともいう) | 時間や回数など、特定の条件をクリアした時だけ、強化子が与えられる強化スケジュール。 主に、変動比率スケジュール、固定比率スケジュール、変動時隔スケジュール、固定時隔スケジュール、の4つがある。 しかし、この他にもたくさんの細かいスケジュールがある。 |
変動比率スケジュール(VR:Variable Ratio) | 強化子が与えられる条件が変動する回数によって決まるスケジュール。このスケジュールで獲得された行動は、高頻度で自発され、消去もされにくい傾向がある。*例、ある時は1回電話に出たら褒められ、ある時は5回、ある時は3回…など。 |
固定比率スケジュール(FR:Fixed Ratio) | 強化子が与えられる条件が一定の回数によって決まるスケジュール。*例、営業の電話を50回するたびにポイント獲得など。 |
変動時隔スケジュール(VI:Variable Interval) | 変動する時間経過後の最初の行動に強化子が与えられるスケジュール。*例、営業時間が日によって異なる店での買い物など(何時から開店なのか明確ではなく、変動する時間経過後、買い物ができて強化される) |
固定時隔スケジュール(Fixed Interval) | 固定する時間経過後の最初の行動に強化子が与えられるスケジュール。*例、行きつけの店での買い物など(一定時間経過しないと開店しないので強化されない) |
死人テスト | 行動を定義する方法の一つ。死人にもできることは行動ではない。逆に死人にはできないことはすべて行動。基本的に~しないなどは行動ではない *例、暴れない、じっとしている、失礼なことをいわない、これらはすべて行動ではない |
消去 | これまで強化されていた行動の強化子を与えなくすることによって、行動を減らすこと。*例、はじめは上司にあいさつしたら「おはよう、今日もがんばってね」と言われていたが、最近は「おう」しか言われず、あいさつしなくなった。 |
消去バースト | 消去が行われる時、一時的に行動が増加すること。 *例、知り合ったばかりの人にメールを送ると、すぐ返信が来た。しかしその後、メールを送ってもなかなか返信がこなくなった。一時的に「メール届いてますか?」「返信いただけると助かります」などメールを送る行動が増加した。 |
ベースライン | 特別な介入などを行わず、ありのままの自然な状態のこと。 |
内的妥当性 | その研究において、測定したいものがどの程度正しく測定できているかを示す。原因と結果を考える上で重要。 |
外的妥当性(一般化可能性ともいう) | ある研究で得られた結果が他の事例においてどの程度当てはまるかを示す。 |
信頼性 | ある研究で得られた結果が、同じ条件で繰り返し測定した場合に、どのくらい同様の結果が出るのか示す。結果の一貫性や安定性の基準となるもの。 |
分化強化 | ターゲットとする行動やそれに類する行動だけを強化し、それ以外の行動は消去すること(強化しない)。たくさんの種類がある。 *例、会議の時に、部下が意見を言うのは強化するが、それ以外の無駄話しは強化しない、など。 |
他行動分化強化(DRO) | ターゲットとする行動が決められた時間現れなかったら強化する方法。問題行動を減らす時に良く使われる。 *例、午前の就業時間中に無駄話しをしなかったら強化する、など。 |
代替行動分化強化(DRA) | ターゲットとする行動の代わりになるような行動を強化する。 *例、就業中に無駄話しをする社員に対して、無駄話しをする代わりに課題を与え、遂行したら強化する。 |
非両立行動分化強化(DRI) | ターゲットとする行動と両立しないような行動を強化する。 *例、いつも周囲への不満ばかり言う社員に対して、周囲の人の良いところを言うように提案し、強化する(不満を言うことと、褒めることは両立できない)。 |
高反応率分化強化(DRH) | ある時間中に決めた行動数を超えた場合に強化する方法。この方法で強化された行動は高い反応率を示す。 *例:1時間以内に営業電話を10回以上かけたら強化する。 |
低反応率分化強化(DRL) | ある時間が経過するまでターゲット行動が1回も現れず、決めた時間が経過後の最初の行動を強化する方法。この方法で強化された行動は低い反応率を示す。 *例:5分間無駄話しをしなかった場合に、5分後の最初の発話に応答する。 |
般化 | ある刺激に対して特定の行動を学習すると、似たような刺激に対してもその行動をするようになること。 *例:会社で上司に大きな声であいさつすると「気持ちいいあいさつだね」褒められ、他の上司に対しても大きな声で挨拶するようになった。 |
トークンエコノミー法 | 好子出現による強化(正の強化)で行動を強化する方法の一つで、好子としてトークン(直接的な好子の代理となるもの)を与える。 *例:商品を100円購入するたびに1ポイント(トークン)与える、与えたポイントは様々な商品(本当の好子)と交換できる。 |
タイムアウト法 | 好子消失による弱化(負の弱化/負の罰)で行動を弱化する方法の一つで、不適切な行動を行ったあとに好子が得られる環境を一時的に剥奪する。 *例:無駄話しをした生徒に対して廊下に立たせる(他の人と共に勉強や話ができるという好子が得られる環境から一時的に外させる)。 |
プレマックの原理 | 高頻度で起こる行動は低頻度で起こる行動の好子となること。低頻度行動の後に高頻度行動を付随させることで、低頻度行動を増加させる。 *例:ネットサーフィンばかりで書類を作成しない社員に対して、書類を作成(低頻度行動)したら3分間のネットサーフィン(高頻度行動)の時間を与える。 |
モデリング | 適切な行動を習得させる場合に、お手本となる見本を見せ、模倣させること。 *例:レジの打ち方を教えるときに、上司が実際にレジを打ってみせる。 |
馴化 | ある刺激をなんかいも提示すると、その刺激に対する反応が鈍くなり、反応が薄れていくこと(簡単にいうと馴れのこと)。 *例:はじめは会社で電話がかかってくると、あせってまともに応対できなかったが、特別な訓練をしなくても何回も繰り返すと落ち着いて応対できるようになった。 |
脱馴化 | ある刺激に馴化した(馴れた)状態で新しい刺激を与えると、反応が戻ること。 *例:電話に落ち着いて出れるようになったが、ある日電話の音と同時に上司から「はやく出て!」と言われ、再びあせるようになった。 |
古典的条件づけ(レスポンデント条件づけともいう) | なんの反応も起こさない中立な刺激の後に生理的な反応を起こす刺激を繰り返し提示することで、もともとは中立であった刺激も生理的な反応を引き起こすようになる手続きのこと。パブロフの犬などがこれにあたる。 *例:上司から怒られる際に、いつも4階の会議室に移動させられて怒られ、泣いていた。そのうち、4階の会議室に入るだけで涙が出てきた。 |
道具的条件づけ(オペラント条件づけともいう) | 行動した後の結果によってその後の自発的行動の増減に影響を与える手続きのこと。強化や弱化などのことで、行動分析学の多くの研究がこれに当たる。 |
代理強化 | 他人が強化されている状況を観察して間接的に強化されること。 *例:他人が会議中に発言して褒められているのを見て、それを見た人も会議中に発言するようになった。 |
行動随伴性 | 行動する前の環境と行動と行動した後の環境の変化、これらの関係性のこと。3項随伴性という場合もある。 |
徹底的行動主義 | スキナーが構築した、環境と行動の関係性に着目する哲学。思考や感情も行動として捉える。行動分析学は基本的にこの立場をとる。 |
組織行動マネジメント(パフォーマンスマネジメントともいう) | ABAの領域の一つで、組織における人間の行動を対象としたマネジメント。日本ではまだ普及していないが、外国ではJOBM(Journal Organizational Behavior Management)と呼ばれる専門雑誌が発行されている。 |
弁別刺激 | その刺激があることで、特定の行動が強化されたり、弱化されたりする刺激のこと。 *例、電話の着信音が鳴った(弁別刺激)→受話器を取る→通話することができる(強化子) |
ルール | 「〇〇のとき(先行条件)☓☓すると(行動)こういうことになる(結果)」 という言語刺激。実際に行動したことがなく、強化や弱化されたことのない行動にも影響を与える事がある。 |
ルール支配行動 | ルールによって制御される行動。 *例、会社の上司から、「営業の電話をかけるとき(先行条件)新規の顧客に営業電話をかけたら(行動)査定評価アップ(結果)」と言われ、はじめて新規の顧客に電話をかける。 この例のように、今まで1回も行動したことがなく、強化も弱化も受けていなくても、ルールによって行動が増えたり、減ったりすることがある。 |