概要

社会保険労務士法人協心様の大阪支店にて、顧客提案に向けた事前準備の組織行動マネジメントを実施。
顧客提案に向けた行動アセスメントから初め、日々の行動データに基づいたフィードバックを全体と個別で導入しました。
その結果、適切な行動の遂行率が約70%から93%へと改善しました。

クライアントの背景・課題

課題や改善したいことはなんですか?
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
私の仕事は、顧問のお客様がいて、そのお客様に満足してもらうことで、そのお客様から別の新規お客様を紹介されるケースが多いです。
そのために、私達のどんな取り組みがお客様の満足につながっているのか、組織で共有して改善していきたいです。
実際にお客様からお褒めの言葉を貰ったりすることもあると思いますが、どういう従業員が貰うことが多いでしょうか。
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
そうですね…
明確にこういうことをしている従業員が~という具体的な行動がわからないんですよね。

アプローチ

最初から改善したい行動が具体的な方が少ないですから当然ですよね。
まずは、お客様と関わるに当って、どのような行動をしているのかを調査してみましょう。
このようなシートを作成したので、従業員の皆さんに聞いてみてください。
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
これはどういう意図があるんですか?
お客様と関わっている最中と関わる前にどんな準備をしているか、
自分がお褒めの言葉を貰ったときと他者がお褒めの言葉を貰ったときにどんな行動をしているか、
逆に不満をいわれた時の振る舞いと準備はどうしていたか、
これらを聞くことが狙いです。
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
なるほど!
早速皆に聞いてきましたがどうでしょうか?

私の方で、分析させていただきましたが、特に興味深かったのはこちらです。
これは、お客様と関わる前の準備行動についてまとめたものになります。
最も成果を出している従業員3名を”優”、次点で成果を出している従業員3名を”良”、それ以外の従業員を”一般”としてグラフにしました。
これを見ると⑤の行動だけ、一般層は全くやっておらず、成果を出している人のみがやっている行動だとわかります。
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
成果を出している人しかやっていない行動が、一般の人もやれるようになったら素晴らしいですね。
それで。⑤の行動ってどんな行動だったんですか?
⑤は「事前にどんな話をどのような手順で提案するか準備する」という行動でした。
多くの一般従業員は、それをせずに、その場で判断しているかもしれませんね。
ただ、この結果はあくまで一回従業員に答えてもらった内容なので、”日々継続的”にやっているかはわかりません。
そこで、次は日々の職場での行動記録を取りたいのですが、吉村さんの事務所では日報を取っているそうですね。
その日報に合わせて①~⑤の行動記録を日々取ってもらうことは可能でしょうか。
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
わかりました!
まずは2週間ほど日々の行動記録を取って、日報と合わせて貰うようにします。
日々の行動記録を見ると、⑤の行動は、成果を出している層とそうではない層の乖離が最も大きいのがわかります。
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
乖離の大きさだと、④の行動も大きいですよね?
確かに④の行動も乖離が大きいですね。
しかし、それぞれの行動を行う機会がどれくらいあるかも合わせてみると、④の行動は半分以上で行う機会がないことがわかります(右のグラフ)。
よって、行う機会もあり、成果を出している人とそうではない人の乖離が大きい⑤がやはり重要な行動なんだとわかりました。
八重樫
八重樫

結果

それではここからが本番です。
ここまでは「どんな行動に焦点を当てるべきか」という標的行動の選定を実施しました。
ここからは、実際に⑤の行動をどのように改善させていくかに入ります。
せっかく行動記録を取っているので、それを活かしたパフォーマンス・フィードバックを実施してみましょう。
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
パフォーマンス・フィードバック?
それって普通のフィードバックとは違うんですか?
違います。
一般的なフィードバックでは、「頑張ったね」「すごいじゃないか」など、相手の考えや仕事に対して指摘や評価を行うことを指します。
しかし、パフォーマンス・フィードバック(以下P・F)では、”行動や行動の成果の客観的な情報を、遂行者本人へフィードバックして行動させる手法”です。
欧米の組織行動マネジメントでは、組織改善として最も使われている手法で、従業員のこれまでの行動データをグラフなどでフィードバックすることが多いですね。
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
P・Fか~
聞いたことなかったです。
私の事務所だとどのように実施するんですか?
P・Fを実施する際にはいくつかポイントがあります。
全体の行動データをフィードバックするのか、個別にフィードバックするのか、誰がどのくらいの頻度でフィードバックするのか、などですね。
吉村さんの事務所では、社内共有のSNSがあるそうなので、そこで1週間に一度、⑤の全体の平均遂行率を投稿してみましょう。
それで行動に変化があるか見ていきましょう。
八重樫
八重樫
BLとはベースラインの略称で、組織へ介入する前の段階という意味です。最初の週だけ85%と高いですが、その後の推移を見ると、日々行動を記録することによる初頭効果と考えられます。それを踏まえると現状の水準は70%ほどですね。
問題はその後です。全スタッフの平均遂行率という形で、全体P・Fを実施しましたが、変化が見られていません。
P・Fのポイントとしてお伝えした内容を踏まえて、P・Fのやり方を変えてみましょう。
全体から個別の行動グラフをP・Fして、社内SNSではなく直属の上司からP・Fを実施する形ではどうでしょうか。
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
全体P・Fだと、自分の行動データはわからず、どこか他人事のような気もしていました。
普段から関わっている上長から個別P・Fを貰うとまた違う影響が出るかもしれませんね。
早速実施してみます。
全体P・Fでは改善が見られなかったですが、個別P・Fだと安定して右肩上がりの高水準になりましたね。
元が70%ほどの水準だと考えると、最終的には93%まで引き上がったのは十分な変化と言えます。
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
これだけ安定して皆が準備するようになったのは嬉しいですね。
また、数値上の変化だけではなく、明確な行動指標を決め、数値化・グラフ化し、それに基づいて改善策を考える、この仕組み自体にも価値を感じました。
一点心配なのは、実際に取り組んでくれた従業員達がどう思っているかです。
こういう仕組みを、「上層部や外部から押し付けられた」と思っていないか気になります。
仰る通りですね。
負担感や重要性、今後も継続していきたいかなど、
現場の従業員の声を聞いてみましょう。
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
従業員達の声を聞いて来ました。
八重樫さんに具体的に何を聞くべきか作ってもらいましたが、結果を見ると全て肯定的な回答ですね。
安心しました。
最初から最後まで、徹底して行動にフォーカスしてデータを取り続け、そのデータに基づきながら意思決定したのは新鮮で価値を感じました。
ありがとうございました。
そうなんです!
どの組織も、売り上げなどの成果指標はデータを取るのに、その成果につながる行動を明確に決めて、その行動データを取って意思決定しようとはしません。
行動科学(ABA)に基づいた組織行動マネジメントは、机上の理論だけではなく、徹底的に現場の行動にフォーカスして、その行動を変えるところまでやるのが特徴です。
魅力を感じてくれて嬉しいです。
ありがとうございました。
八重樫
八重樫

クライアントの声

最後に吉村代表に、今回の取り組み全体についてインタビューを行ったので、その内容を紹介します。

まずは、今回取り組んでみての感想を聞かせてください。
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
色々とありますが、特に印象に残っているのは、「幅広くどれも大事」として抽象的にするより、明確な行動に落とし込み、「この行動が大事」と絞った方がやってる身としてもやりやすかったです。
なるほど!
ではここから具体的に聞かせていただきます。
今回の取り組みは、開始前に抱えていた課題が解決したのか、進めていく中で課題自体が明確になって、それが解決したのかでいうとどちらでしょうか。
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
後者ですね。
漠然と受け身で仕事をしていたのが、明確な行動基準をもつことで変わりました。
直ぐに新規顧客◯倍!とはなりませんでしたが、長期的には成果につながる確信があります。
また社内の雰囲気も良くなりました。
雰囲気が変わったと言いましたが、それはどの段階で感じましたか?
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
標的行動を1つに絞ったときですね。
絞ったことで新人もベテランも、明確にこれが大事なんだと伝わり、普段やることが多い仕事だからこそ何に力を入れるべきか、すっと一本筋が入った感じがしました。
逆に絞ったことで、
「なんでこれに取り組まなければいけないのか」
「私が大事だと思っていることは無視されるのか」
などの不平不満が出るとかはありましたか?
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
不満ということはないですね。
ただ最初に標的行動を決める際、候補が5つありましたが、それを1つにしたときに、「自分は全部大事だと思う」と言って、自分のデスクトップに貼り付ける人がいたぐらいです。
それはすごい従業員ですね!?
私も予想しなかった反応です。
では次に、改善手法として全体FBと個別FBを導入しましたが、このFBについての影響はどう感じましたか。
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
全体P・Fを導入する前に、「このFB(フィードバック)は評価と結びつけてないよ」と言ってしまったので、初期はこの重要さが伝わらずにテキトーにやっている感じがありました。
後半の個別P・Fで、これまで人ごとだったのが自分ごとになったと思います。
ただ、順番的にはこれで良かったかもしれません。
いきなり個別P・Fだと、取り組み自体を警戒されるかもしれませんが、一旦全体P・Fがあったからこその個別P・Fの結果かもしれません。
確かに順番の影響は考えられますね。
段階的に実施したからこそかもしれません。
今回実践した、標的行動を定める→それを日々記録する→その内容をグラフと共にFBするという流れは、別な課題や行動にも使える、あるいは使おうと思いますか。
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
行動の選び方であったり、数値化の仕方は非常に勉強になったし、良い試みだと思いました。
今後も定期的にやりたいですね。
ぜひやってみてください!
今回行動データを取るに当たり、吉村さんの事務所では、元々毎日日報を付けるという習慣がありました。
そのような習慣がない他組織でも、今回みたいに日々自身の行動を記録するというのはできそうですか?それとも週一回などのほうがいいと思いますか?
八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
むしろ週一回のほうがシンドイと思いますね。
日報がなくても、業務と合わせてルーティーン的にやるほうがいいです。
出退勤時とかでも、ルーティーン化されているほうが忘れないし当たり前になります。
鋭いご意見ですね。
一見、なるべく負担を減らすために記録の頻度は下げようと思いがちですが、いかにルーティーン化させるかという発送は非常に重要です。

最後に、今回の取り組みを、他の組織で実施する上でのご意見などありますか?

八重樫
八重樫
吉村代表
吉村代表
元々人事評価制度に興味を持ったところからが始まりだったんですが、年に1回や2回の評価で行動を変えようとするより、今回の取り組みに価値を感じました。
これをすることで、仕事の見方が変わります。
多くの組織では、漠然と仕事をしていると思うので、業界業種問わず、明確な行動に落とし込み、グラフなどで日々追って、どう改善するかのすり合わせは取り入れる価値があります。
ニーズとしては顕在化されていないだけで、潜在的にはすごくあると思います。
非常に嬉しいコメントありがとうございました!
八重樫
八重樫