デール・カーネギーの名著「人を動かす」は、ビジネスや人間関係において成功を収めるための基本的な原則を提供しています。
「人を動かす」は全世界で1,500万冊以上売れている、最も有名なビジネス書の一つです。
2024年の今でも、ビジネス書カテゴリーでは人気があり、常に上位に来るほどの名著といえるでしょう。
本書の中では、「人を動かす三原則」が紹介されています。
しかし、その三原則は本当に正しいのでしょうか。
行動科学×マネジメントとして確立されている分野である、組織行動マネジメント(以下OBM:Organizational Behavior Management)の観点と、カーネギーの教えを共にみていきましょう。
原則1:人を非難するかわりに相手を理解するように努めよう
カーネギーの視点
カーネギーは、他人を非難するのではなく、相手を理解しようと努めることが重要であると説いています。
これにより、対人関係が改善され、協力的な関係が築けるとしています。非難は防御的な反応を引き起こし、対話を阻害します。
相手の立場に立って理解しようとする努力が、信頼関係を築く鍵です。人々が理解され、尊重されていると感じると、よりオープンで協力的な態度を取るようになります。
OBMの観点
OBMもこのアプローチを強く支持しています。行動分析学では、行動の背景にある環境要因を理解することが重要とされます。
従業員の行動を非難するのではなく、その行動が生じた背景や原因を理解し、適切なサポートを提供することが効果的です。
例えば、ABC分析(Antecedent-Behavior-Consequence)を用いることで、行動の前後に何が起きたのかを詳細に分析し、改善策を講じることが可能です。
いつどんな環境下で(A)、具体的にどのような行動をした/してないのか(B)、その結果どうなったのかを明確にすることにより、行動の要因を見極めます。
原則2:率直で、誠実な評価を与える
カーネギーの視点
率直で誠実な評価を与えることは、人々の自尊心を高め、モチベーションを向上させるために重要だと述べています。
カーネギーは、偽りのない本物の評価が人々に自信を持たせ、さらに努力する動機付けになると信じています。
人々は、自己の価値が認められ、評価されると、自己改善に向けて積極的に取り組む意欲が高まります。
OBMの観点
OBMでは、フィードバックの重要性が強調されています。特に、具体的で行動レベルのフィードバックが重要です。
フィードバックを提供する際には、評価が具体的であり、行動に基づいていることが必要です。これにより、従業員は自分のパフォーマンスを明確に理解し、改善のための具体的な行動を取ることができます。
また、ポジティブなフィードバック(Positive Reinforcement)を用いることで、望ましい行動を強化し、維持することが可能です。行動科学に基づいたフィードバックは、従業員が自分の行動を客観的に評価し、自己改善の機会を見つける助けとなります。
原則3:強い欲求を起こさせる
カーネギーの視点
カーネギーは、人々に強い欲求を起こさせることで、動かすことができると述べています。
これは、動機づけの重要性を強調しています。カーネギーのアプローチでは、他者の視点やニーズを理解し、それに基づいて強い動機づけを行うことが効果的です。
人々の内在的な欲求や目標に訴えかけることで、自主的な行動を引き出すことができます。
OBMの観点
OBMでも、動機づけを理解し、それを利用して行動を変化させることが重要とされています。
例えば、従業員がどのようなことに価値や好みを持っているのかを調べる好子調査を行うことで、従業員のモチベーションを理解することが出来ます。
また、プレマックの原理(Premack Principle)を活用し、従業員が高い頻度で行う行動を報酬として利用することで、望ましい行動を促進することが可能です。
好子の適切な選定とタイミングによって、行動の強化と持続を効果的に行うことができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
カーネギーの「人を動かす」は、人間関係と動機づけの基本原則を提供しています。
これらの原則は、OBMの科学的アプローチと深く関連しています。
OBMは、カーネギーの提唱する原則を具体的で測定可能な方法で実現し、組織全体のパフォーマンスを向上させるための強力なツールとなります。
企業管理者がOBMの価値を理解し、効果的に導入することで、組織はより健全で生産的な環境を築くことができるでしょう。
最後に、OBMの長所を紹介します。
OBMの優れている点
OBMは、行動科学に基づいたデータベースのアプローチを提供し、具体的な行動の変化を目指します。これは、カーネギーのアプローチと同様に、人間の行動に深く根ざした方法です。OBMの優れている点は、以下の通りです。
1. データベースのアプローチ: 科学的根拠に基づいた具体的な行動管理法
2. 行動変化の具体性: 具体的な行動の変化を目指す
3. 正の強化とフィードバック: ポジティブで具体的なフィードバックを通じた行動強化
4. 個別アプローチ: 個々の従業員の行動を重視し、個別対応が可能。
OBMに興味・感心を持たれた方はぜひお問い合わせください。