サイゼリヤの間違い探しをご存知でしょうか。
各テーブルにメニューと共に置かれているこんな冊子。
この間違い探しですが、難し過ぎることで有名です。
合計10個の間違いの内、6-7個はすぐ見つかるものの、10個見つけるには大人でも数十分かかるくらいには苦戦します。
さらに、どれぐらい難しいかというと、動物の位置が1mm違う、枠の長さが1mm違うなど、そのレベルです。
本来、間違い探しは飲食店には不要の物です。
それどころか、回転率を悪化させるようにすら思えます。
ならば、なぜサイゼリヤはここまで難しくさせているのでしょうか。
その場を楽しむ
サイゼリヤ変革推進部部長はこのように言っています。
「間違い探しをやらなくても、ゆっくり過ごす方は多いですし、回転率には影響しないと考えています。
食事は料理だけでなく、その場を楽しむことも大事だと考えています。
イタリア語で『La Bouna Tavola(ラ ヴォーナ ターヴォラ).』といい、私たちがお客様に体験していただきたい、豊かな食事体験のことをいいます。
間違い探しはこれを補助するツールとして、テーブル内で盛り上がっていただければ」
ORICON NEWS (2018). https://x.gd/Osojf
料理の美味しさは当然として、料理以外の要素、その場を楽しむことが大切だと語っています。
問題の本質は何か
さて、なぜ今回サイゼリヤの間違い探しを紹介したかというと、ここからどの問題を改善させるかが学べるからです。
チェーンの飲食店でよくある問題として、提供スピードが挙げられます。
そのため、顧客から「料理が出てくるのが遅い!」と不満が出た際、「提供スピードを早くしよう。そのためには…」と考えがちです。
しかし、本当に提供スピードを改善させることが、問題の本質なのでしょうか。
提供スピードはどんなに工夫しても限界があり、何分待たされると不満に感じるかは個人差が大きいです。
そこで、注目したのが間違い探しです。
通常のお店であれば、待っている時間は退屈です。
やることといえば、せいぜいスマホで時間を潰すくらいでしょう。
そんな中、サイゼリヤへ行くと、待ち時間に間違い探しという、サイゼリヤにしかない小さなエンタメがあります。
提供スピードは同じでも、自分で時間潰しを見つける必要がなく、顧客の不満解消へ繋がるかもしれません。
また、これは子供にも有効な戦略です。
小さい子供だと、自分で時間を潰す上手い方法を見つけるのが難しく、料理が届くまで退屈になりがちですが、間違い探しはここでも一役買っています。
つまり、問題の本質は、「不満が出ないよう提供スピードを向上させること」ではなく、「提供されるまでの上手い時間潰しを用意すること」とも考えられます。
エレベーター問題
サイゼリヤの間違い探しとよく似た話に、エレベーター問題というものがあります。
毎日大人数が利用するオフィスビルのエレベータは、「待ち時間が遅い!」と利用者から不満が続出しています。
これを受けてオフィスビルの支配人は、到着時間を早くさせるよう、エレベーターシステム設計の専門家を呼びました。
専門家によると、スピードを早くするには、以下の方法しかないそうです。
①エレベーターの数を増やす
②新型にする
③特殊な制御装置を取り付ける
しかし、どの方法も莫大な費用がかかり、予算を考えると実施は難しいと判断しました。
困った支配人は、部下に意見を求めました。
すると、ある部下がこう言いました。
「エレベーターの前に大きな鏡を置きましょう!」
支配人はハッとして、早速鏡を設置しました。
数週間後、利用者の不満の声は激減しました。
クライアントの困りごとすら疑う
サイゼリヤの間違い探しやエレベーター問題から学べるように、本当に解決すべき問題は隠れていることがあります。
クライアントが「〇〇に困っている」と言っていても、安易に「じゃあそれを解決するためには…」と考えるのは危険です。
クライアント自身ですら、本当の問題を分かっていないかもしれません。
困りごとをそのまま鵜呑みにするのではなく、「本当にそれはコストをかけて解決すべき問題か?そもそもの問題はなにか?」と疑問に持つことが大切です。