ここ何回かでお伝えしている、
ちょっと使えるABA(応用行動分析学)のお話。

本日は「確立操作」というものをお伝えします。

「確立」であって、「確率」ではないところに注意!

操作、という言葉がわかり辛くしてしまっていますが、
これは、「establishing operation」という英語を、
そのまま単語で訳しているからなのです。

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★確立操作で行動しやすく。【行動分析学で人を動かす】
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〇同じものでも価値が変わる「確立操作」

初めて聞くような専門用語で、戸惑われるかと思いますが、
分かってしまえばそんなに難しくないものです。

そして、これもうまく使うと非常に効果的なものですので、
ぜひ知識を身に付けて、活用できるようにしていきましょう。

【確立操作】
「好子や嫌子の力を強めたり、弱めたりする操作のこと」

同じ好子、例えば、私は「サバの塩焼き」が大好物なのですが、
時と場合によっては、この「強さ」が大きく変わってきます。

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・朝から何も食べずに、やっと夜にありつけた、
一か月振りに食べる「サバの塩焼き」。

・直前に外食をした後で、お腹がいっぱいのときに、
昨晩食べた残りが今日も出てきた「サバの塩焼き」。
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同じ「サバの塩焼き」でも、
食事をするという行動をより強化する、
好子としての強さが大きく変わるのですね。
好子としての強さを確立する、先行条件の操作のことを「確立操作」というのです。

分かりやすい例でいうと、上の例のように、
「遮断」されていて、出てくる好子や嫌子か、
「飽和」していて、出てくる好子や嫌子ではその強さが違うというと、
イメージが分かりやすいのではないでしょうか。

この時の「遮断」することや、
「飽和」させることを「確立操作」といいます。

動物のトレーニングをする際には、
エサを好子として使うことが多いのですが、
よりそのエサを魅力的なものにするため、
食事を「遮断」してから、トレーニングに臨むようにするそうです。

その他にも、いろいろあります。

例えば同じ「お菓子」であっても、
「期間限定!」
「ご当地限定!」
「先着10名まで!」とすると、
その価値が高まり、「買う」という行動がどれだけ強化されるかも変わってきます。
分かりやすい確立操作ですね。

同じ「ダイエットグッズ」であっても、
「〇〇大学教授推薦!」
「30kgの減量成功したあの芸能人のお墨付き!」というような確立操作でも、
やはり変わってきそうです。

・・・そして流行りすぎて、
皆が持って当たり前になってくると、
今度はそんなに欲しくない。
これも確立操作です。

毎日毎日、「君はすごいよ!」と褒めてくれる上司の承認の言葉と、
普段はあまり褒めてくれない上司からの、
レアな「君はすごいよ!」という承認では、
かなり行動に与える影響も違いそうです。

最近は、褒めることで部下の動機づけを図ろう、
育成につなげようというやり方が主流となってきていますが、
この確立操作の効果も、頭にいれておいて、
うまく「さじ加減」を図る必要がありそうですね。

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★編集後記
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昨夜、皆既日食でした。
ご覧になりましたでしょうか。

我が家からもはっきり見えて、
月が欠けていくことや、
赤くなっていく様子を、
しっかり観察できました。

・・・ただ、寒かったので、
ずっとは見ていられず、
部屋とベランダを行ったりきたり。

今は、なぜ月が欠けるのか、
赤くなるのかが科学的に解明されているので、
落ち着いて見ていられます。

しかし、昔の人たちは、
きっと月が欠けたり、赤くなったりすることは、
超常現象として、恐れられたり、
逆に地域によっては、喜ばれたりしていたのではないでしょうか。

なぜ人が行動するのか。

これも、まだまだ科学では解明されていない大きな分野のひとつかな、
と個人的には考えています。

ABA(応用行動分析学)も、
その解明のひとつの手がかりなのではないでしょうか。