誰もが自社を満足度の高い職場であって欲しい、あるいはそんな職場にしたいと考えることでしょう。
しかし、一言で「満足度の高い職場」と言っても、具体的にどのような職場なのか見えてきません。

そこで今回は、満足度の高い職場とはどのような状態か、どうすれば魅力ある職場になるのかについて紹介したいと思います。

●満足度の高い職場とはどのような状態か

まず始めに、満足度の高い職場の状態について考えていきます。
どのような職場の状態であれば、満足度の高い職場が作れているといえるのでしょうか。

厚労省が2017年に公表している、「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業」によると、”従業員の視点に立った雇用管理”が重要であるとされています。

従業員自身が今の職場にどれくらい満足しているのかを知り、改善のための取り組みを行うことで、
①従業員の意欲の向上
②業績・生産性の向上
③人材育成
これら3つの向上につながるといわれています。

調査結果では、従業員満足度を重視している企業は、顧客満足度のみを重視している企業と比べて、売上高が増加したと答えています。
また、「魅力ある職場づくり」のための取り組みの実施期間が長い企業ほど、正社員の人材確保についても、「量(人数)・質ともにできている」とする割合が高くなっています。

出典:厚生労働省「今後の雇用政策の実施に向けた現状分析に関する調査研究事業」

 

●満足度という抽象的言葉

ここまで、厚労省が公表している満足度についてお伝えしてきました。
しかし、実はこの「満足度」という言葉は非常に抽象的なものです。
一般的に満足度をどのようにして捉えるかというと、「1:今の職場に満足していない~5:今の職場に満足している」などのアンケートで調査することがほとんどですが、このアンケート調査にはデメリットがあります。

職場満足度をアンケートで調べるデメリットとして、アンケートに嘘なく答えているか、回答時のタイミングによって回答が変わってしまわないか、回答者以外の人はどう感じているのかなど、回答者の主観に大きく左右されることが挙げられます。

 

●客観的に満足度を考える

そこで、もう少し客観的に、満足度を考える必要が出てきます。
しかし一概に、〇〇があること=満足であると定義することは困難です。
なぜ困難かというと、「満足は個人によって違う」からです。

人には個人差があり、特定のものや制度がある職場でも、Aさんは魅力的に感じるかもしれませんが、Bさんは魅力的に感じないかもしれません。
例えば、「全従業員に最新のiPad支給する」という制度がある企業を考えてみましょう。この制度は非常に客観的に定義されていますし、個人の主観が入り込む余地は少ないです。
ただし、最新のiPadを支給されることが満足かどうかは人によります。ある人は最新のiPadよりも、休憩時間や出勤時間を好きに取れるほうが満足かもしれません。

つまり、満足を安易に客観的定義してしまうと、個人の価値や好みが無視されるデメリットが出てきてしまうのです。
主観的過ぎても、客観的に定義し過ぎても上手くいかないということです。

 

 

●ABA的に満足度の高い職場を実現する

そこで、満足度の高い職場づくりに繋がる考えとして下記のようなものがあります。
ABAでは、主観的満足と客観的評価の両方を加味して満足を考える、”行動的QOL”が提唱されています(望月, 2001)。
行動的QOLは、自ら選んだ能動的な行動の選択肢を増やそうということです。
※厳密には「正の強化で維持される行動レパートリーの拡大」ですが、今回は簡易的に表現しています


「自ら選んだ能動的(行動)」で個人の好みを踏まえ、「行動の選択肢を増やす」で客観性も踏まえるという内容になっています。

嫌なことから逃れるための行動ではなく、能動的な行動を増やすことがポイントです。
例えば、業務が発生しても、「怒られないために終わらせよう」「評価を下げられないように終わらせよう」これは嫌なことを回避するするための行動です。

脅迫的な条件による回避行動を減らして、能動的行動を増やしていく、これが行動的QOLです。

この行動的QOLに基づいて、「魅力ある職場づくり」を実現するためには3つの段階があるといわれています(レベルが高いほど良い状態です)。

レベル1:能動的な行動がある
→回避や逃避ではない行動がある。やりたい業務が少なくとも一つあるなど。

レベル2:能動的な行動を選択できる
→個人がどれを選ぶのか決められる。やりたい業務が複数あるなど。

レベル3:能動的な行動の選択肢を提案する機会がある
→新しい仕事のやり方を提案できる。既存の非効率的なやり方を廃止する機会がある(提案機会があることが大切なので、実際に全部受け入れなくても良い)。

これを期に皆様の組織ではどのレベルの人が多いのかチェックしてみましょう。
そして、レベルを上げるために、どんな業務・休憩・休日・働き方の選択肢や選択の機会を用意できるか考えることで、魅力的な職場の実現に繋がります。

出典:望月 昭(2001). 行動的QOL:「行動的健康」 へのプロアクティブな援助 行動医学研究, 7, 8-17.

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