組織行動マネジメントとは
あなたは組織行動マネジメントをご存知でしょうか。
”組織”も”行動”も”マネジメント”も一般用語ですので、一見すると「組織の行動をマネジメントするんでしょ?」となんとなくイメージするかもしれませんが、そうではありません。
「組織行動マネジメント」は確立した行動科学(心理学)の一分野です。
おそらく殆どの方がこの分野を知らないと思います。
それも無理ありません。
この組織行動マネジメントは国内で専門的に学べる大学などが存在せず、アメリカでの実践や研究が主だからです。
マネジメントは国内でもよく聞くテーマで、様々な〇〇マネジメントがビジネス本やインターネット記事で溢れています。
しかし残念なことに、そのほとんどが「どういう学問や研究データに基づいているのか」「理論ではなく実際に現場の行動を変えたデータはあるのか」「なぜその手法が効果的だと言えるのか」「有名企業などではなく誰でも使えて効果が出るのか」「具体的にどのようにやるのか」に答えられません。
組織行動マネジメントは、明確な学問的根拠を基に、体系づけられたものです。
そこで今回は、当法人でも実践している組織行動マネジメントについての概要を紹介したいと思います。
ABA(応用行動分析学)がベースのマネジメント
組織行動マネジメントは、ABA(応用行動分析学)という行動科学・心理学に基づいて行われます。
具体的にはこのように定義されます。
「行動分析学(ABA)の科学によって蓄積された行動原理に基づき、パフォーマンス改善、及びそのための手法開発、評価などを行う。
ビジネス、産業、ヒューマンサービス分野で、営利/非営利に関わらず、組織内の個人またはグループのパフォーマンス向上に焦点を当てる。
OBMの目標は、従業員がより生産的で、より幸せで、組織がより効果的・効率的に目標達成できるように、パフォーマンス改善と組織改革の技術を確立することである。」
Hall, B. L. (1980). Editorial. Journal of Organizational Behavior Management, 2(2), 145-150.
つまり、単にマネジメントは手法を導入することではなく、応用行動分析学に基づいて組織改善の技術を確立することが重要です。
また、組織行動マネジメントは、現場の継続的な行動改善を大切にしています。
理論や理屈でおわることなく、実際に組織の行動データを測定し、その行動データに基づいて改善手法を提案します。
これが「技術を確立する」ということです。
組織行動マネジメントのやり方
組織行動マネジメントは下記の手順で進めていきます。
今回は特に重要な部分をピックアップして紹介します。
成果に繋がる行動を特定する
まず初めに改善したい組織の問題や成果に繋がる具体的な行動を特定します。
「成果を出している人はどのような行動をしているのか」
「どんな状況でどんな行動を行うと成果に繋がる確率が上がるのか」
「成果に繋がらない行動は何か」
などの観点から、観察や調査を通して、改善すべき標的行動を見つけます。
現状の行動を測定する
次に現状どれくらい行動しているかを測定します。
測定は、一度ではなく繰り返し個人の行動を測定します。
繰り返し測定することで、行動データに基づいた意思決定が可能になります。
一回限りの測定だと、その人の傾向やバラつきが見えないので、日々行動データの変動を見ながら、改善の手立てを検討するためです。
集団の平均値ではなく、各個人の行動データを測定するのは、個人差に配慮しているからです。
同じ組織の同じ業務でも、個人によって有効なマネジメント手法は変わってきます。そこで、誰がどれくらい行動しているのか、良くなっているのか悪くなっているのか、安定して行動しているのか日によってバラつきが激しいのかなどによって、改善の手立てが変わってきます。
このような測定方法は、シングルケースデザインと言います。
改善の手法
改善の手法はいくつかありますが、代表的なものとして、パフォーマンス・フィードバックがあります。
パフォーマンス・フィードバックとはこのようなものです。
測定された行動データを、行動者本人へグラフ化してフィードバックして、行動改善させる手法です。
他にも、現状の行動データや、組織環境に合わせて、ABA(応用行動分析学)の知見から有効な手法を提案します。
タスクを明確化し、従業員に求めていることを行動レベルで伝える教示法や目標設定、
スキル不足を訓練する行動スキルトレーニングなども、分析結果に応じて実施します。
これらの改善手法は、全てABA(応用行動分析学)知見が活かされています。
例えば、行動スキルトレーニングには、ABAの課題分析やモデリングという知見が、
以上となります。
今回はあくまで組織行動マネジメントの概要紹介ですので、ご感心持たれた方はぜひお声がけください。
その場しのぎのマネジメントから、行動科学を根拠にした、体系づけられたマネジメントへ脱却してみませんか。