グレッグ・マキューンの著書「エッセンシャル思考 -最少の時間で成果を最大にする-」はビジネスの分野で非常に有名で、多くの国で翻訳&紹介されています。

そこで今回は、「エッセンシャル思考をABA(応用行動分析学)を用いて行動改善まで実現させていく」というコンセプトで考えてみたいと思います。

ABAマネジメント協会
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この記事のポイント!
・エッセンシャル思考とABAの概要がざっくり分かる
・エッセンシャル思考×ABAで成果をさらに大きくする考え方が分かる
・エッセンシャル思考×ABAの運用例が分かる

エッセンシャル思考とABAの概要

ではまず、エッセンシャル思考とABA(応用行動分析学)の概要を見てみましょう。

エッセンシャル思考

エッセンシャル思考は、本質的に重要なことに集中し、無駄や余計なことを削除することを推奨する思考法です。

具体的には、個人や組織が直面する複数の選択肢の中から、最も価値の高いタスクを選び出し、それに注力をしていくというアプローチです。

エッセンシャル思考では「より少なく、しかしより良く」を信条とし、限られたリソースを効果的に活用することが重要とされています。

ABA(応用行動分析学)

ABA(応用行動分析学)は、向上させたいことを行動レベルに落とし込み、行動を観察・測定し、強化することで望ましい行動を促進する科学的手法です。ABAは教育や療育の分野で広く使用され、行動の変容を目的としています。

ABAの基本的なプロセスでは、行動を観察して記録し、強化スケジュールを設定し、フィードバックを通じて行動を改善していきます。

エッセンシャル思考とABAの相互補完は可能か?

エッセンシャル思考は、「重要なことに集中する」という観点を持っています。

エッセンシャル思考では、タスクの優先順位を明確にして、最も重要な活動にリソースを集中させます。

一方、ABAは望ましい行動を強化することで、その行動の頻度を増やします。

このことから、エッセンシャル思考で重要なタスクを特定し、ABAでそのタスクに関連する行動を具体的に選定し、その行動を強化することで、マネジメントの効果を更に高めることができると考えられます。

エッセンシャル思考にABA手法を組み込むと・・

抽象的な説明ばかりしても「エッセンシャル思考×ABA」でどのような成果が得られるのか分かりづらいかと思いますので、例を出して説明していきたいと思います。

たとえば、あるパン屋さんがあったとします。そのパン屋さんでは様々な課題が山積みで売上も下がる一方・・。従業員の士気も落ちに落ちていました。

そこで、エッセンシャル思考を用いて課題の優先順位を考えたところ、以下のようになりました。

1.商品が飽きられている
2.品質の一貫性がない
3.スタッフのスキル不足
4.コスト管理ができていない

まずは最も優先度が高い「商品が飽きられている」という課題を解決するために『新製品の開発』に集中することにします。

しかし、新商品の開発といっても、具体的にどんな行動をすればいいのか不明です。

「新商品開発」を達成するためには、「既存のパンの共通点/不足点をまとめる」かもしれませんし、「お客様のフィードバックを収集し、その結果に基づいて試作を改良していく」かもしれません。

まずは、他の業務を削減して開発に専念することとし、「お客様のフィードバックを収集し、その結果に基づいて試作を改良していく」という作戦を立てました。

そして、スタッフが店頭やアンケートでお客様からのフィードバックを得た際には、そのフィードバックコメント20件につき、インセンティブを付与することにしました。

このインセンティブはABAでいう動の強化子(行動を強化するもの)となり、スタッフは積極的にお客様に試食をおすすめして、意見や感想を聞いてくれるようになりました。

その結果、お客様の声を反映させたヒット商品が誕生し、売上を大きく伸ばすことに成功しました。

これはあくまで例ですが、実際に自組織に当てはめてみて「エッセンシャル思考×ABAって使えるかも・・」と感じられる方も多くいらっしゃると思います。

ABAの行動の強化についてもう少し

ABAの行動強化について、もう少し掘り下げてみましょう。

行動強化の基本的な考え方は、望ましい行動が発生したときに、その行動を強化(報酬を与える、等)することで、その行動が将来起こる可能性を高めます。

たとえば、パン屋のスタッフが新製品のフィードバックを集めた際に、インセンティブを付与することでその行動が強化されるかもしれません。

注意すべきは、インセンティブが強化子の一つのアイディアだということです。

別のパン屋や異なる業種では、インセンティブよりも自由な休み時間UPや上長からのポジティブなコメントが強化子になるかもしれません。

そう、強化子は組織ごと、人ごとに異なるのです。

そして異なるからこそ、普段の行動を観察して、従業員がどのような行動を進んでやっているのか、それにはどのような強化子が付随しているのかをチェックする必要があります。

まとめ

エッセンシャル思考は重要なタスクに集中し、ABAはそのタスクに関連する行動を強化します。このように、エッセンシャル思考とABAは親和性が高く、組み合わせることでより大きな成果を上げることができます。

タスクの優先順位付けと具体的な行動強化についてはすぐに始めることができるので、ぜひ実践してみていただけたらと思います。

 

参考文献:グレッグ マキューン著、高橋璃子翻訳(2014) . 『エッセンシャル思考ー最少の時間で成果を最大にするー』 . かんき出版 .